1974年、オカルト映画ブームの中で公開された「悪魔の赤ちゃん」。ギョロ目に牙のインパクト強過ぎな化け物赤ちゃんが有名ですが、劇中ではなかなかその姿を写さずチラ見せ演出で全編引っ張っぱります。CGではないアナログ特撮の怪物一体で見せ切る、当時のB級ホラー演出の魅力について解説しています。
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ざっくり解説「悪魔の赤ちゃん」はこんな映画
「悪魔の赤ちゃん」
1974年 アメリカ 91分
製作・監督・脚本 ラリー・コーエン
主演 ジョン・P・ライアン
B級SF・ホラー映画の作り手として有名なラリー・コーエンが製作・監督・脚本をこなしたユニークなモンスター映画。生まれたての赤ちゃんが狂暴な怪物で、医師や看護婦を殺してはいはいで逃走、世間を恐怖させるという、当時としてはかなり斬新なお話。アカデミー賞受賞特殊メイクアップマン、リック・ベイカーがクリエイトしたモンスター赤ちゃんの強烈なビジュアルが有名。
「悪魔の赤ちゃん」ストーリー
出産に立ち会った医師や看護師が皆殺しにされ、新生児が忽然と姿を消す。出口が小さな通気口のみだったことから、狂暴な赤ちゃんの仕業と推察され、両親はマスコミや世間から好奇の目に晒される。
赤ちゃんが狂暴化した原因は新開発のピルの副作用。そのため製薬会社は赤ちゃんを抹殺しようと企てる。
赤ちゃんは出くわした人を殺しながら、家族の住む自宅へやって来る。なぜか両親や兄弟は襲わない赤ちゃんを家族は守ろうとするが、警官隊は容赦なく一斉射撃を浴びせる。
「悪魔の赤ちゃん」ここが見どころ!
シンプルで強烈なモンスターのビジュアル
古い作品なので、私も映画館では観ていないんですが、雑誌のホラー映画特集やホラー専門紙などで赤ちゃんの写真がよく紹介され、その強烈な姿に、これは絶対に凄い映画に違いない!と思っておりました。
膨れ上がった頭部にギョロっとした大きな目と牙、3本指の手には鋭い鉤爪。でもシルエットはハイハイで進む赤ん坊。この「乳児」のイメージを大きく変えずに狂暴そうに見せたシンプルな「恐い赤ちゃん」の存在感こそ、この映画の命ですね。
モンスターを簡単特撮で効果的に見せる
この低予算ホラーでモンスターをクリエイトしたのは、特殊メイク界の巨匠、若き日のリック・ベイカー。赤ちゃんの登場カットはどれも短く、物陰からチラッと、という感じで全身像を見せませんが、これは当時の特殊効果技術の都合だと思います。
基本は、等身大のダミー人形を死角から操っているんですね。動きも硬めです。
あと、多分、人が被るマスクと着ぐるみもあったと思います。時折妙に肩幅のある動きの良い赤ちゃんのカットが挿み込まれてましたから。
モンスターをなかなか見せない演出で引っ張る
前述の特撮の都合もあったとは思いますが、前半は赤ちゃんの姿をなかなか見せず、主観で迫るカットや犠牲者の惨状で引っ張ります。見せてもクローズアップで一瞬だけ。
後半徐々に赤ちゃんの醜怪な姿が明らかになりますが、それでもモロ見せはせず、最後まで出し惜しみすることで、ただの小さいダミー人形をしっかり危険極まるモンスターに仕立て上げてましたね。
モンスター1体でホラー映画1本。少ない出番をドラマで補う。
リック・ベイカーのモンスターの魅力がこの映画の命です。あの恐い赤ちゃんの姿を見たさに最後まで引っ張られました。
同時に、突然モンスターの家族になった主人公らの苦悩や、変異の原因を作った企業の隠匿体質、家族の許へ戻ろうとする赤ちゃんの悲哀等、人間ドラマ部分で頑張り、モンスターの画や直接的残酷描写の少なさを補っています。
モンスター1体で映画1本成立させる。昔はそういうホラー、沢山ありました。
これこそ、CGも無ければ、特殊メイクも成熟しきっていなかった頃の低予算ホラー映画の作り方ですね。
CG全盛の今の時代でも最後まで見せ切る力があります!
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