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特殊メイクが凄まじいゾンビ映画「デモンズ」

 アナログな特殊効果を駆使した変身シーンが凄まじい、イタリア製ゾンビ・ホラー映画「デモンズ」の魅力について全力で語ります。日本公開当時の無理矢理な宣伝戦略などについてもお話ししています。(画像はイメージです)

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ざっくり解説「デモンズ」はこんな映画!

「デモンズ」(原題 DEMONI)(英題 DEMONS)
 1985年 イタリア 88分 ランベルト・バーヴァ監督 ダリオ・アルジェント製作

 「サスペリア」の監督として知られるイタリア・ホラー映画界の巨匠、ダリオ・アルジェントが製作した新しいタイプのゾンビ映画。
 ホラー映画を上映中の劇場内で、映画の内容と同様のゾンビ現象が発生するという、限定空間を舞台にしたゾンビ・パニック作品。
 人を喰わずに引っ掻いて感染させる、悪魔憑依タイプの凶暴なゾンビは当時斬新だった。

「デモンズ」ストーリー

 不気味な仮面の男が配布していた招待状を手に、映画館へ集う人々。上映された作品は憑依型ゾンビもののホラー映画だった。
 若者たちがノストラダムスの墓を暴き、棺に納められていた仮面を被った1人が悪魔のように豹変し、仲間を襲うという内容。
 この映画と同様に、劇場ロビーのディスプレイの仮面をふざけて被った女性客が頬を傷つけ、傷口から何かに感染。凶暴なゾンビと化して友人に襲い掛かる。
 「映画と同じ事が起こっている!」
 劇場内はパニックに陥り、観客は出口へ殺到するが、全ての出入り口はいつの間にか壁で塞がれていた。
 ゾンビ現象が拡がる地獄と化した映画館内で、若い男女が必死で戦い脱出を試みる。

「デモンズ」詳細解説

 G・A・ロメロ監督の「ゾンビ」で製作を担当したダリオ・アルジェントは、続く企画「死霊のえじき」にもシナリオ段階から参加していた。その後、資金調達の問題から撤退を余儀無くされたダリオが、イタリアで独自に製作したゾンビ映画がこの「デモンズ」だった。
 監督のランベルト・バーヴァが抱えていたオムニバス映画の企画にダリオが興味を持ち、ゾンビ映画としての大作化が実現。
 内容的にはウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」と「死霊のはらわた」から着想を得たと言われている。
 ちなみに「カイロの紫のバラ」は映画の中から主人公が現実世界へ抜け出して来る話。「死霊のはらわた」は言うまでもなく、邪悪な存在に憑依された人間が凶暴なゾンビと化して仲間を襲う話。
 監督のランベルト・バーヴァはイタリアンホラーの名匠マリオ・バーヴァの息子。
 本作の撮影中は1日20カットのペースで画を撮り進めたと伝えられるが、まあ、普通。
 ただし、セルジオ・スティバレッティ率いる特殊メイク・特殊効果チームの撮影も現場で本編と同時進行したとのことで、本当ならばそれはちょっと凄い。凝った特殊効果を用いたカットが満載の映画なので。特殊効果撮影は時間を食うので、通常後撮り、別撮りになることが多い。
(拙作「地獄の血みどろマッスルビルダー」も特殊効果はほとんどが後撮り)
 映画は世界中でヒットを記録。ホラー・ブームに沸く日本でも、配給元の東宝東和によるいつもの宣伝攻勢により話題作として公開の日を迎えた。

「デモンズ」のここが凄い!

 「デモンズ」にまつわる諸々のよもやま話は後回しにして、先ずは私血みどろ監督深沢のお薦めポイントを言ってしまいますね。

特殊メイクとダミーを駆使したアナログな変身過程が生々しい!

 ホラー映画ではCGがまだポピュラーじゃなかった時代の作品なんですよ。当時のホラーの花形は何と言っても高度な特殊メイク!
 特殊メイク技術は当時の最高レベルでしたが、特にダミーを使ったデモンズへの変身過程の映像が不気味で思わずゾッとしてしまいました。
 人間から悪魔の化身へと移り変わる瞬間の非人間的な姿と動きの不気味なこと。まさに生ける屍という表現が相応しい。
 ・・・正直言うと、作り物のお人形なんで人間らしさを感じさせないだけなんですがね。
 それでも、化け物が実際にその場に存在する生々しさはアナログ特殊効果ならでは。
 現在ならCGでアッサリと処理されてしまうところでしょう。その場合、大変スムースでゲームの動画部分かアニメのような仕上がりになるのだと思います。
 ゴム製のダミーヘッドを、内蔵のメカやワイヤーで中から動かす、あの若干のぎこちなさが良かったんです。人間とは違う不自然な筋肉の動きが、絶妙な化け物感を醸し出していました。
 あの独特の不気味さ、生々しさは、アナログな特殊メイク・特殊効果全盛だった、80年代当時のホラー映画特有の魅力なのかも知れませんねえ。

ロメロともフルチとも違う悪魔系ゾンビが新しい!

 今ではさほど珍しくもなくなりましたが、「デモンズ」の悪魔のような獣じみた凶暴なゾンビ像は、当時はあまり前例が無く新鮮でした。
 青塗りで虚ろな目つきのロメロ・ゾンビとは全く違うアプローチの、攻撃力の高い恐ろしいゾンビは、派手なスプラッターにうってつけのモンスター像を確立しました。
 まあ、「死霊のはらわた」の体育会系ゾンビを下敷きにしているのは明らかですが。
 それでも、言葉を話し人をおちょくったりする「死霊のはらわた」のゾンビに対し「デモンズ」の悪魔ゾンビは猛獣のような問答無用の完璧な脅威。「死霊のはらわた」同様その後のホラーに影響を与えました。
 (例えばイタリアンゾンビの「人喰地獄ゾンビ復活」は完全にデモンズ系)
 それにしても、「青いゾンビ」を嫌った「サンゲリア」の白いゾンビといい、この「デモンズ」といい、当時のイタリア映画はスタンダードなロメロ・ゾンビとは違う新機軸を積極的に打ち出していたんですね。

やっぱりスプラッターが凄い!

 スプラッターという言葉が生まれ、ホラー映画には特殊メイクによる残酷描写が付き物だった80年代ゾンビ・ホラーです。全編リアルな傷口メイクにあふれていて、流れる血も相当な量でした。
 デモンズの鋭い爪で皮膚を肉ごと掻き毟ったり、眼球を抉り出したり、ヘリのプロペラでゾンビの身体を粉砕したり。
 中でも、主人公が日本刀片手に劇場内をバイクで駆け抜け、ゾンビを片っ端から切り捨てて行くシーンは、血みどろですが爽快感がありました。
 全部CG無しのリアル・メイクなので重量感があり見応え十分です。お腹いっぱい。

映画館がまるごとホラー空間!

 これは劇場で鑑賞できた人間限定なんですけどね。やっぱり映画館内がゾンビと血飛沫にあふれる地獄絵図を映画館で観る、ってちょっといいもんでしたよ。
 当時は家庭用ビデオデッキの普及によるホラービデオ・ブームで、家でホラーを観る機会が多くなってきた時代でした。カウチポテト、なんて言葉も流行りましたからね。
 そんな当時だからこそ、映画館で映画を観ることって貴重な体験でした。小さなイベントでしたね。話題の新作ホラーに初めて出会うのは、テレビ画面よりスクリーンの方が良いじゃないですか。
 ホラーファンにとって、様々なホラー映画と出会った思い出の場所である映画館。ホラーの舞台にはおあつらえ向きだと思います。
 私は土曜の午後、当時新宿で一番大きかった「新宿プラザ」でこの「デモンズ」を1人で観ました。たまたま客の入り具合が劇中とほぼ同じくらいで、妙な臨場感を味わうことができましたよ。

「デモンズ」よもやま話

「デモンズ」にまつわるオマケ情報をいくつかピックアップします。

登場人物に関して

 悪魔一味の1人、仮面の男を演じているのは、後に「アクエリアス」「デモンズ95」などの傑作ホラー映画を手掛けるミケーレ・ソアビ監督。俳優としてはルチオ・フルチ監督の「地獄の門」などにも出演していました。
 劇場のもぎりを演じている妙に目力のある若い女性は、名作「サスペリアPART2」で殺人犯の絵を描いていた不気味な女の子です。育った。
 他、若いカップルの彼女の方は、ダリオ・アルジェントの先妻との間の娘、フィオーレ。可愛い。

東宝東和考案!キュービック・ショック!!・・・って何?

 日本公開時の配給元は東宝東和。「バーニング」の殺人鬼クロプシーに「バンボロ」なる名前を独自に付けてしまったり、「サランドラ」(この邦題も?)では劇中全く登場しない「ジョギリ」なる凶器を勝手に考案して宣伝したり、・・・と何でもアリな独創性にあふれる(?)企業でした。
 「デモンズ」では、
「脅威の新立体ホラー・システム=キュービック・ショック超大作!」
 と謳い、あたかも最新3D方式での上映のようなふれ込みで、チラシやムックなどを通じ大々的な宣伝を展開しましたが、早い話が「映画の中でも映画館でホラー映画を観ているよん」というだけのこと。システムでも何でもありゃしません。
 更にチラシの裏面では「キュービック・ショック」への対処法を指南してくれています。
 具体的には、上映中隣の席の観客がデモンズ化したかどうかの見分け方、などを伝授してくれています。人生においておよそ何の役にも立たないであろう情報満載で、このチラシ、ほとんど資料価値がありません。

ゾンビに勝手にネーミング

 「バタリアン」でもやってましたよね。日本国内の宣伝用に劇中のゾンビに勝手な名前を付けちゃうという・・・
 サタナキア、ルキフェル、グシオン、バルバトス、ガウ、そしてアキロンの大王・・・
 プログラムや関連書籍の中で、劇中登場するゾンビのスチール写真に適当な名前を付け、嘘八百のデタラメなキャラ設定解説文まで付けちゃってました。
 特に酷いのがサタナキアとグシオン。これよく見ると同一ゾンビの別の写真です。一方は特殊メイク、一方はダミーヘッドなんですが同じゾンビです。気付かずそれぞれに別の名前を付けちゃってます。

字幕で無理矢理「アキロンの大王」が復活する物語に・・・

 配給元東宝東和は「デモンズ」日本公開に合わせて発売された関連本や、劇中の字幕スーパーを通して、映画の内容を「ノストラダモスの予言に基づき悪魔アキロンの大王が復活するお話」ということにしようとしていました。
 で、そのアキロンの大王役に抜擢されたのが、劇中女デモンズの背中を突き破って登場する子鬼みたいな小っちゃい奴。
 字幕スーパーで「アキロンの大王が~!」みたいなセリフを無理矢理挿入。
 小っちゃいのは晴れて大王様に。
 このアキロンの大王、登場人物の1人を「えいっ!」と引っ掻くと、変なポーズで走って逃げます。以降活躍無し。

90年代アメリカ・ゾンビ映画への影響

 90年代から2000年代にかけて、フルムーンなどが製作したアメリカの低予算ゾンビ映画「デモンズナイト」(99年)、「「ゾンビ2001リボーン・トゥ・キル」(2000年)等々の作品は、「デモンズ」の劇中劇のゾンビ映画に似せて、更にそれを超えるような作品を目指して製作されたそうです。

墜落してくるヘリコプターは「ゾンビ」からのつながり?

 クライマックスで劇場の天井を突き破り墜落して来るヘリコプター。
 このシーンについては、「死霊のえじき」に参加出来なかったダリオ・アルジェントが、「ゾンビ」のラストで飛び立ったヘリを意識して入れた、という説があります。
 この説に関しては「アメリカから劇場があるベルリンまでヘリで飛んで来れるわけない」ということで、今では否定的意見が主流のようです。監督のバーヴァも「ゾンビ」との関連を明確に否定しています。
 ただ、やはりこのシーン、ダリオ・アルジェントは「ゾンビ」を意識して入れていると思います。
 アメリカからベルリンまでヘリで来れるか、という意見は無視して良いと思います。実際飛んで来たわけじゃなく、あくまでも意識しているかどうかのお話ですから。
 「ゾンビ」との関連が伺える根拠として、このヘリのプロペラを回してゾンビの頭部をスライスするカットがあることが挙げられます。
(ちなみに頭半部スライスされちゃうのはアキロンの大王様です)
 ヘリのプロペラがゾンビの頭を砕く、ロメロ版の「ゾンビ」にもありますね。ホラーファンに人気の有名なシーンですが、ダリオ・アルジェント監修版ではカットされています。
 アルジェントはかつてロメロの「ゾンビ」について、「あんなに残酷では(検閲で)どこの国でも公開できない」という趣旨の発言をしています。つまりアルジェントは「ゾンビ」のあの名シーンを、検閲をクリアするためにカットせざるを得なかった可能性があります。  
 ひょっとしたら「デモンズ」で同じ残酷描写を再現して、「ゾンビ」編集時の残念な思いを晴らしたのではないでしょうか?
 もしそうだとすれば、あの唐突なヘリの墜落は「ゾンビ」を意識した演出、ということになりますね。
 ま、これはあくまでも私の推測ですが。

血みどろ監督の勝手な私見「デモンズ」ここをこうすればもっと・・・

 と、ここまで私が絶賛してまいりましたこの「デモンズ」、正直、ホラーファンの間では賛否両論です。ランベルト・バーヴァ監督の力量不足、映画後半の盛り上がりの弱さなどを挙げる声が多いようです。
 監督の力量は・・・プロの演出家としての水準は問題無くクリアしていると思いますよ。ただ、ズバ抜けて優秀というわけでもない、というだけで。
 これだけ全編見せ場がいっぱいのゾンビ映画なら、私としては十分楽しく観れてしまうので特に不満はありません。ありませんが・・・
 まあ、しいて言えば、クライマックスの仮面の男とのバトル、あそこをもっと盛り上げれば更に良かったんじゃないかと思います。
 主役カップルが仮面の男に襲われ戦う、というシーン。殺されるか脱出できるか、という重要なポイントですよね。
 なのにミケーレ・ソアビ演じる仮面の男が、何かあんまり強そうじゃないと言うか・・・痩せたターミネーターみたいなんですね。
 構成上の位置付けとしてはラスボスに当たると思うので、あそこでもっと強力でグロテスクな化け物にでも変身して襲い掛かってくれれば、最後の大きな山場が出来て鑑賞後の満足感も大幅増だったのではないかと・・・
 まあ、これは私個人の勝手な意見です。欲張り過ぎですね。。
「デモンズ」は全編見せ場がいっぱいの楽しいホラー映画でした。

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