90年代、地味過ぎるパッケージでビデオソフト化され、低い認知度のまま叩き売りワゴンセールの常連となったゾンビ映画「ナイトライフ」。実は見せ場タップリなこのホラー映画の面白さを、どこよりも熱く語ります。
スポンサードリンクざっくり解説「ナイトライフ」はこんな映画
「ナイトライフ」(原題・NIGHT LIFE)
1989年 アメリカ 90分(VHS版収録時間)
監督 デヴィッド・アコンバ 主演 スコット・グライムズ
特殊メイク グレイグ・リアドン
80年代青春ホラーの隠れた秀作
吸血鬼の「フライトナイト」(85)「ロストボーイ」(87)、ゾンビの「クリープス」(86)等々、80年代には優れた青春ホラーが数多く製作された。
特徴としては、モンスターとの戦いに若い男女の恋愛の行方を絡めたストーリー展開で、特殊メイクを駆使した過激な見せ場を多く含むものの、鑑賞後の印象は爽やか。
この「ナイトライフ」もまさにそんな80’S青春ホラーの1本。
高校生の男女が、ゾンビ化した不良グループとの一夜のバトルの中で、お互いの気持ちに気付き惹かれ合ってゆく。
青春ものとしてもゾンビホラーとしてもちゃんと楽しめる良作。にもかかわらず作品の認知度は極めて低く、もっと評価されて然るべき1本。
「ナイトライフ」ストーリー
成績優秀な高校生アーチーは大学進学費用のため叔父の経営する葬儀社で働いている。
高校では男女4人組の不良グループに日々からかわれているアーチー。車で追い掛け回されたりと、いじめは時に悪質だが、友達で美少女のチャーリーはいつも彼を助けてくれる。
ある晩不良グループの4人が交通事故で死亡。危険な科学薬品が流れ出している事故現場でアーチーは4人の死体を確認。叔父の葬儀社で彼らの死体を処置することに。
深夜、外は嵐になり、葬儀社に落雷。薬品と電気ショックの影響なのか、不良グループの死体がゾンビ化。生前同様、アーチーを追い掛け回してくる。
たまたまやってきたチャーリーの手を引き、不良ゾンビから夜道を逃げ回るアーチー。
一計を案じた2人は、ゾンビたちを火葬場の焼却炉へ誘い込み点火。見事焼き殺すことに成功・・・したかに見えたが、全身黒焦げのゾンビたちが壁を突き破って現れる。
ゾンビ映画「ナイトライフ」のここが見どころ!
ホラーとしての体裁を崩さない絶妙な爽やかさ
前半は葬儀社で働きながら高校生活を送る主人公の日常が描かれます。不良グループによる嫌がらせが続く日々ですが、主人公が割りと動じない性格に設定してあり、陰惨にはなりません。この少年、いじめられているのに、不良の中の美人1人が気になり色目を使ったりするくらいなので。
また、葬儀社での死体処理作業の模様なども描かれるので、退屈で平凡な青春ものの風景の連続になることもありません。
中盤以降はスプラッター描写たっぷりな怒涛のゾンビホラーと化す本作ですが、ゾンビ化した不良娘が主人公をベッドに誘ったり、ゾンビ同士がベッドインしたり、コミカルな要素も適宜配分。
更に、助け合う思春期の主人公とヒロインの関係が適度に爽やかさを保ちます。
ゾンビ損壊描写などグロ度高めの楽しいホラー
後半はしつこく迫り来る不気味なゾンビたちとひたすら戦い続ける怒涛の展開。随所に散りばめられた派手なゾンビ損壊描写を楽しめます。アナログな特殊メイクによるスプラッターが味わい深いです。
顔面を斧で真っ二つに分断したり、眼科にドリルを突っ込んだりと凝った残酷描写が多数。特に顔の欠損部分をロウで補填されたゾンビの造形が不気味で良いです。更にその補填された顔面がボロッと崩れ落ちるサービスぶり。
ゾンビ映画の秀作はなぜ評価されなかったのか?
青春映画としてもゾンビホラーとしてもバランス良くまとまった本作ですが、埋もれてしまったのはなぜか?
原因は日本版ビデオソフトのパッケージとタイトルにあったと思います。
(本作は劇場公開無しのビデオスルー。後にテレビ放映)
「ナイトライフ」というただでさえ内容を判断しにくいタイトルであるにもかかわらず、ジャケ表面のデザインは手のひらのアップとタイトル。更に「恐怖は冒険への招待状』という大雑把なコピー。
背表紙は男のシルエットの絵とタイトル。加えて「青春ファンタスティック・ホラー」という健康的なコピー。ジャケ裏の上半分を占めるのは倒れている男の子の写真。
要はゾンビ映画らしくないんです。「冒険」とか「青春ファンタスティック」とか、なんか子供向けっぽい印象。
ゾンビっぽいのはジャケ裏の一番下に骸骨面の男の小さい写真が1枚。あと表面に小さく「死者がよみがえり、僕の戦いが始まった」のコピーのみ。
これだけの情報ではあんなグロいゾンビが登場する本格ゾンビホラーだなんて想像もつきません。
発売当時レンタル店で何度も見かけましたが、背表紙だけ見てスルーでしたね。
その後中古ビデオ店のワゴンセールで頻繁に見かけるようになりましたが、やはりゾンビ映画と気付かずスルー。
その後、国内で鑑賞できるほとんどのゾンビ映画を見尽くしてしまい「もっとゾンビを」と必死で作品を探し求めていた頃、新宿の中古ビデオ店の叩き売りワゴンセールでふと、「死者がよみがえり」という一文が目に留まりやっと購入。
何度もスルーし続けましたが、見逃さなくて良かった。地味な女の子でただの友達だと思っていたら実は凄く可愛かった本作のヒロイン。まさに彼女みたいな作品でした。とても良い子です。
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