ジョン・カーペンター監督のオリジナル版「ザ・フォッグ」。良質の怪談映画でありゾンビ映画的でもあるこの名作ホラーを、私血みどろ監督深沢が、日本公開当時の思い出話など、極めて個人的情報も含めまして詳しく解説いたします。
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1980年5月、「サンゲリア」と同時期に日本公開!
1980年は「サンゲリア」「13日の金曜日」、そしてこの「ザ・フォッグ」などの超有名作が多数日本で公開され、ホラーファンにとっては思い出深い年となりました。
(個人的には「モンスターパニック」「インフェルノ」「エクスタミネーター」「ドクターモリスの島 フィッシュマン」「地獄のモーテル」なんかも大変重要タイトル!)
5月の目玉は何と言っても「サンゲリア」と「ザ・フォッグ」!
テレビでも土曜の夜7時という夕食タイムにホラー映画特番が組まれ、この2作品は特に大きく取り上げられてました。「サンゲリア」は有名な目ん玉ミミズおじさんのシーンとか見せてたのでグログロな印象。一方「ザ・フォッグ」は海岸線や山間から濃霧が不気味に這い進んで来る画を中心に見せ「霧がまるで生き物のよう」と紹介。上品なホラーという印象を与えました。
劇場で観た感想は「スマートな怪談映画」
「サンゲリア」に続き本作も劇場で鑑賞しました。冒頭からグログロゾンビ祭りだった「サンゲリア」に対し、「ザ・フォッグ」はストーリーとムードで盛り上げて行く怪談映画でした。
過去に町の陰謀によって殺され、船ごと沖に沈められた者たちが、霧とともに海岸沿いの小さな町へ復讐にやって来る、というゴースト・ストーリー。
不気味な夜の海から濃い霧が這うように近付く。その中を漂う沈没したはずの帆船。やがて霧は街へ侵入し、中から黒い影が現れ無言で住人を血祭りにあげる。
霧の中、シルエットの亡霊たちが手際良く人を殺す様が妙にカッコ良いんですよ。直接描写は控えられていて、凄い血みどろとか特に無いんですが、それでも殺害シーンは迫力ものでした。
そんな中で、月明かりに照らされ一瞬見える亡霊の顔とか、両眼を抉られた腐乱死体とか、特殊メイクによる見せ場も必要最低限押さえていて、とても効率良く恐怖を盛り上げてましたね。
ポスターの図案もカッコ良かった!
公開当時、ポスターやチラシ、プログラムの表紙に使われていた、落ち武者のような亡霊がシルエットで並んでいるアートワーク。これが格好良いと大変好評でしたね。映画雑誌の特集でも優れたデザインのポスターに挙げられていました。
実は昔、このデザインを真似した絵を美術の夏休みの自由課題で描いて提出しちゃったんですよ。色数も少なく、シルエットで簡単に描けそうだったから。その後その絵が文化祭で展示されてしまい、大変好評を博し、バレやしないかと冷や冷やしました。まあ、友達にはバレバレでしたけどね。
ロブ・ボッティン
特殊メイクは後に「ハウリング」「遊星からの物体X」等を手掛けるロブ・ボッティン。彼はその長身を買われ、亡霊の親玉役として出演もしています。
一見して、彼の技が光るような派手な特殊メイクはあまり見当たりませんが、姿がハッキリ見えない両目が赤く光る亡霊などは地味ながら良い仕事だったと思います。
テレビ放映
「ザ・フォッグ」は、日本公開から2年ほど経った1982年、テレビ東京の「木曜洋画劇場」で初放映されました。冒頭でジャン・ミッシェル・ジャールの曲をバックに作品全体をまとめた、けっこう長いダイジェストが流れ、続いて本編という構成でした。このダイジェストの曲が割と映像にマッチしていて、私の中では完全に「ザ・フォッグ」のテーマ曲になってしまっています。録画テープで毎日繰り返し観てましたので多分そのせいですね。
ホラー映画のテキスト的作品
過去の事件の因縁が語られ、時を経て記念の日に死者が復讐に帰って来る。小さな怪現象が起こり始め、やがて人が殺され、元凶が姿を現す。登場人物たちが集合して怪異と対決。事件は解決したかに見えたが・・・
ホラー映画のシナリオを描く際参考にしたくなるような綺麗な展開を見せる作品でした。この骨組をいろんなシチェーションに当てはめることが出来ると思います。親の因果が子に報い、的な物語は日本の怪談的でもありますよね。なので日本でリメイクしたらもっと相当怖く出来そうな気もします。
ちなみに私血みどろ監督深沢は、高校生時代にこの基本形を拝借してホラー映画を撮ったことがあります。
1年前に射殺された殺人鬼の亡霊が自分の命日に復活、生前殺したのと同じ人数の4人を殺害しようとする話。3人殺したところで亡霊は滅び、事件は終わったかに見えたが…
という感じでした。文化祭で上映して好評を得たものの、その直後に「ザ・フォッグ」がテレビで再放送され、クラスメートから「似てる!」と指摘されてしまいましたよ。
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