国内外の脱力必至なゾンビ映画を10作品厳選してご紹介します!
(画像は拙作「悪夢のはらわた」より)
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最近のゾンビ映画は質が高い
昨今のゾンビ映画は非常にクォリティが高くなっています。
低予算のインディーズ作品でも、デジカムとパソコンの普及により、高画質撮影と高度な編集、CG処理等が可能となりました。スマートフォンでもハイビジョン映像が撮れてしまう今の時代、プロとアマの技術的な垣根は無くなりつつあります。
特殊メイク技術も、ネット上での情報の共有により急速に一般化しました。100円ショップの材料だけで凝った傷口やゾンビフェイスが作れてしまいます。
ひと昔前には奇跡のゾンビがいっぱい!
しかしほんの20年前はまだ、映画は高価なフィルムで撮るのが当たり前の時代でした。それだけで高度な専門技術と大きな予算を要し、素人の出る幕はありませんでした。
それでもインデペンデント系の作家たちは夢に向かい、根性で映画を撮り上げていました。また予算の無いプロも、ビデオカメラを使うなどして、何とかそれなりに映画らしきものを撮っていました。
そんな時代だからこそ世に出ることが出来た奇跡の脱力ゾンビ映画10作品を、カルト・ゾンビホラー「地獄の血みどろマッスルビルダー」監督、私深沢真一が、責任を持って厳選、ご紹介いたします。
週末の夜、缶ビール片手に肩の力を抜いて観るのに最適な愛すべきフィルムたちです。
ただし、ご鑑賞には時間的余裕と広い心が必要です。お時間の無い方、赦しの心をお持ちでない方は、絶対にご覧にならないでください。
01「タートゥ 死霊の呪い」
「DEATH CURSE OF TARTU」
1966年 アメリカ 85分 ウィリアム・グルフェ監督
大昔に死んで埋葬されたアメリカ先住民の妖術師が、ヘビ、ワニ、サメなどに変身しては、聖なる土地への侵入者を襲います。
グッタリした元気の無い大蛇に自分から巻かれて死ぬ人、のそのそと這い進む元気の無いワニに追い詰められ喰われる人、川を泳ぐ変わったサメ(背びれのみ&資料映像)に喰われる人、などなど、独創的な動物パニックの連続に前半は睡魔との闘い必至です。
でもご安心ください。後半は主人公の考古学者と妖術師ゾンビの一騎打ち。お待ちかねのゾンビバトルが展開します。
重い棺の蓋を押し開けて、全身ミイラ化した妖術師の遺体がゆっくりと起き上がります。しかし次の瞬間、観客は衝撃的な光景を目の当たりにします。
上半身を起こししばしボーっとしていた妖術師ゾンビですが、何を思ったか、生前の姿、つまり血色の良い半裸の中年男性に変身して元気いっぱいに襲い掛かってきます。
従ってその後展開される人類対ゾンビの壮絶な死闘ですが、画的には中年男性2名による取っ組み合いの大ゲンカになります。
別作品の抱き合わせ上映用に急遽製作された、短期即製の低予算ホラー。
一度は施された全身ゾンビメイクですが、クライマックスには一切生かされません。
観る者それぞれが「このオジサンはさっきのゾンビなんだ」とイメージングしながら観なければならないという、観客の想像力に挑戦した作品です。
02「悪夢の死霊軍団 バージン・ゾンビ」
「A VIRGIN AMONG THE LIVING DEAD」
1971年 フランス 105分 ジェス・フランコ監督
叔母の遺した屋敷で暮らすことになったヒロイン。同居する親類や使用人は変人ばかり。やがて彼女は、幻覚と悪夢に日々悩まされるようになります。死んだはずの父親まで現れ、「ここの住人の正体は悪魔」と彼女に忠告します。そしてある日、同居人たちが一斉に襲い掛かってきますが、果たしてこれも現実なのか?夢なのか?
ん?これのどこがゾンビ映画なの?
大丈夫です。ちゃんとゾンビは出てきます。
ヒロインの夢の中に。
一見浮浪者にしか見えないゾンビの群れが、ヒロインを追いかけ、空き家の中に追い詰めます。そしてみんなで寄ってたかって彼女の身体を触ります。ペタペタとソフトに触ります。この行為に何らかの意味を見出そうとしても無理です。夢ですから。
ジェス・フランコ監督が完成させた幻想的な作品に、ジャン・ローランが後撮りしたゾンビが登場する夢のシーンを加え、無理矢理ゾンビ映画に仕立て上げています。後撮りのためヒロインは代役なので一度も顔が映らず不自然です。タイトルもゾンビ映画風に改題されています。
この手法を用いれば、どんな作品でもゾンビ映画にリメイク可能ですね。
えなりかずきがゾンビの夢を見るシーン追加で、「渡る世間はリビングデッド」とか。
03「FIEND 悪魔の飽食」
「FIEND」
1980年 アメリカ 90分 ドン・ドーラー監督
墓場から甦った腐乱死体が通りすがりの女性を絞め殺し生命エネルギーを奪います。するとゾンビは冴えない外見の中年男性に変身。
人間の姿を取り戻したこのゾンビの目的とは?
目的はよく分かりませんが、先ず家を借りました。そして起業しました。バイオリン教師として独立起業、アシスタントの女性まで雇用してます。ペットに猫も飼い始めました。出勤前には愛車を磨き、仕事を終えた後には晩酌もします。
このゾンビ、時折人を絞め殺す点を除けば、ごく普通の独り身のオヤジです。
そんなオヤジゾンビでしたが、お隣の奥さんにちょっかいを出したことから旦那とのバトルが勃発。映画は冴えない中年男2人が揉み合う悪夢のようなクライマックスを迎えます。
当然ながら自主映画です。こんな小さなご近所トラブルをシリアスなゾンビ映画として仕上げようというこの発想。プロにはまず無理しょう。ゾンビの本体は赤いフワフワしたやつなんですが、これがどう見ても子供の落書きで・・・。顔面にペーストを塗っただけのゾンビ崩壊を延々と見せ続けてくれたり、その手作り過ぎる特殊効果に心が和みます。
スポンサードリンク04「ナチスゾンビ 吸血機甲師団 」
「ZOMBIE LAKE」
1980年 フランス・スペイン 87分 J・A・レイザー(ジャン・ローラン)監督
殺されて湖に捨てられたナチスの兵士たちが甦り、近隣住民を襲って生き血を吸います。
住民の中にゾンビが生前作った娘がいて、ゾンビ父と人間娘の心の交流があったり、その子を守るため父ゾンビが仲間ゾンビとケンカになったりと、どうやら感動の親子愛がテーマになっているようです。
全体的にダラダラしてます。演出、編集ともに冗長でのんびりした感じ。再編集したいところです。
ゾンビメイクは肌を緑色に塗るのが基本形。その塗りがかなりいい加減で、撮影中ところどころ剥げて地肌がのぞいちゃってます。またパウダーでしっかり抑えてなかったのか、吸血行為の際、被害者側の肌に緑が色移りしちゃってます。
伊東美和氏著、洋泉社刊「ゾンビ映画大事典」によれば、撮影開始前日に監督が行方をくらまし、急遽ジャン・ローランが代役で呼ばれたとのこと。作品全体ののどかなムードは代役監督の覚悟の無さの表れでしょうか?
私が以前この作品をアメーバブログ「地獄のゾンビ劇場」で紹介した頃、ネット上にこの「ナチスゾンビ」のレビューはまだほとんどありませんでした。今では溢れ返ってますね。残念なホラーを紹介したいレビュアーが真っ先に目を着ける、非常に分かりやすくダメな作品です。
05「エイリアン・デッド」
「THE ALIEN DEAD」
1980年 アメリカ 73分 フレッド・オーレン・レイ監督
田舎町に怪しい集団が出没しては、住民を襲って殺害します。集団の正体は、湖に落ちた隕石の影響で食人鬼と化した近隣住民たち。どこからともなくのろのろと現れては、のろのろと逃げる人々を押し倒して食べます。
新聞記者と地元の娘がのんびりと調査を進め、一応真相を突き止めますが、突き止めたけで特に何も解決しません。
アマチュア映画でありがちな不手際がほぼ網羅されています。
編集の詰めが甘く作品全体がダラダラのろのろとした印象。本番中にカメラのフレーミングが修正されたり、カットが切り替わる度に夜になったり昼になったりするなど、技術面での雑な仕事が目立ちます。
特に酷いのは音の処理で、この映画、音に関してはまだ完成していません。最も重要であるはずのゾンビ襲撃シーンになると、突然全てのSE(効果音)が消えて、テンポの悪いBGMだけになってしまいます。ノイズ無しの無音状態って、音が別撮りだった頃の自主製作映画ではよく見かけました。
超低予算SFホラー映画製作で有名な、フレッド・オーレン・レイ監督が16ミリで自主製作したデビュー作。最低映画界の名物男の原点がここにあります。
06「スペース・ゾンビ 吸血ビールス大襲来 」
「BLOODSUCKERS FROM OUTER SPACE」
1983年 アメリカ 79分 グレン・コバーン監督
砂漠地帯の田舎町を吹き抜ける突風。この風にさらされた者は大量に吐血して絶命、吸血ゾンビとなって甦ります。住民たちが次々にゾンビ化する中、若いカップルが町の状況を調査したり、エッチをしたり、ゾンビと戦ってみたりします。
ホラー映画好きな若者が自主製作したコミカル路線のゾンビ映画。登場人物は町の住民の皆さん。町ぐるみで映画でも作るべ!というお祭り気分な空気感がそのまま作品に出でしまっています。
主人公がゾンビと口論になり、殴り合いを始める。それを別のゾンビと並んで見ているヒロイン。こんなのどかなゾンビ・バトルが二度三度繰り返された後、米軍なども突入して来て大したもんですが、3人だけなので一瞬で壊滅。
終始のどかで緊迫感はゼロ、2度ほどある残酷描写、腕の切断と首の切断も手作り感丸出しでどこか微笑ましい。なのでこの映画、全く怖くはありません。コメディだと思えば良いと思いきや、残念ながら特に笑えもしません。和やかな雰囲気のみお楽しみください。ロケ地の住民の皆さんにはお薦め!
07「ゾンビの秘宝」
「OASIS OF THE ZOMBIES」
1982年 フランス・アメリカ 84分 A・M・フランク(ジェス・フランコ)監督
お話は色々あって複雑なのですが、つまらないので簡潔にまとめさせていただくと、砂漠に財宝を探しに来た人々に、砂の中から甦ったゾンビたちが襲い掛かる、という内容。
内容はつまらないうえ、食人場面の残酷描写なども特に用意されていませんので、ゾンビくらいしか見所がありません。でもこのゾンビたちの造形がけっこう楽しいんです。粘土状の素材で形成した表情固定のお面的なゾンビメイクなのですが、その中になぜか両目を粘土で塗りつぶしたのっぺらぼうな奴がいます。でも前が見えなかったようで小さくのぞき穴を開けちゃっていて・・・結果、昔マンガで見た「目が点」みたいな顔になってます。
あともう一体、ミミズまみれのドクロのようなゾンビがいるんですが、登場シーンはなぜかいつもクローズアップです。顔面以外は一切写りません。さすがに「顔しか作ってないんだな」と判ってしまいます。スタッフの手が入らないよう、カメラのフレーミングで頑張ってる感じが微笑ましいです。
08「代官山ワンダーランドHORROR 悪魔の棲む街 」
1987年 日本 45分 石井てるよし監督
タレントスクールに通う女の子3人が、デビューへの最終テストとして夜の代官山で「イートゥン・ハウス」なる場所を探して歩き回ります。
3人はそれぞれ、ゾンビ、フレディ、ジェイソン、子泣きじじい、蛭子能収(本人)などに遭遇。2人は殺され、最後の1人は銃でゾンビを撃ちまくります。また、通りがかりの女性がゾンビにオッパイをむき出しにされますが本筋には無関係です。
ホラービデオ・ブームの頃にリリースされたオリジナル・ビデオ。アナログビデオ撮り。
本格的にドラマが始まる前に、先ずは女の子たちが代官山を歩く姿を数分間、続いてエアロビをゆるく踊る姿を更に数分間見せられます。尺を稼ぎたかったのでしょうか?それでも僅か45分の作品。
ゾンビ、フレディ、ジェイソンらは市販品マスク、もしくは市販品レベルのマスク着用。特殊効果のこのパーティーグッズ感、時折悪ふざけにも見える役者陣の演技、そして漫画的演出(何かを企んでいる人の目にキラッと光を合成しちゃったり)など、印象としてはまるでバラエティ番組のコントドラマ。ゾンビごっこ。オマケのメイキング映像も楽しそう。浮かれ具合がバブルの頃っぽくて懐かしいです。
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09「ザ・デイ・シャッフル!死霊の群れ」
2000年 日本 65分 岡崎喜之監督
獣医の息子でお坊ちゃんの男が、高飛車な彼女にエッチが下手なことをなじられ、傷心のあまりラブホテルで女性の出張サービスをオーダー。その女性の優しさに感動したバカ息子は自分の彼女をホテルに呼び付け、
「お前もこの風俗嬢さんを見習え!」とあり得ないお説教。
当然のごとく怒り出した彼女に、なんとバカ息子は偶然持ち歩いていた狂犬病の血を飲ませてしまいます。
彼女は即発症して凶暴化、バカ息子と風俗嬢に襲い掛かります。更に隣室のカップルも巻き込まれ発症。かくしてバカ息子と風俗嬢は3人のゾンビ、というか狂犬病の人たちから狭いラブホテル内を逃げ回ることになります。
このストーリーからも判るように、ゾンビ映画にするようなお話じゃありません。ゾンビ現象の発生原因といい、登場人物たちの発想や行動といい、全てがどこか間違っています。
以下はドアが開きゾンビと鉢合わせした時の主役2人の反応。
しばしボーっと立ち尽くし見つめ合っているゾンビと2人。
そしてお互いの顔を見合わせる主役2人。
やれやれという表情。
その間、待っているゾンビ。
そこから殺し合いが始まるんです。人として(あるいはゾンビとして)絶対に普通でない反応が普通に描かれるんで、普通が何なのか分からなくなります。
前半はエッチなシーンばかり、後半ちょっとゾンビという構成も、見ようによっては新機軸ですが、ゾンビ部分がゆる過ぎです。
10「ゾンビ・オブ・ザ・デッド3 エボリュ-ションキング」
2006年 日本 70分 岡崎喜之監督
個人経営の産婦人科クリニックで開発された新薬には、人をゾンビ化するという恐ろしい副作用が。野望を抱く女医が入院患者数人をゾンビ化、クリニックの関係者を襲わせます。
海外の比較的しっかり作り込まれたインディーズ・ゾンビ映画に変な邦題を付けてリリースしたこのシリーズ。変な邦題が吉と出てそこそこセールスが良かったのか?
「ようし!第3弾は自社製作で行くぞ!ゾンビ映画くらい作れるよ、多分」
となったのかどうか知りませんが、えいっ!と作っちゃった本作は誰もが見たことのないゾンビ映画の新境地を切り開いた作品となりました。
前半から中盤以降までAVに匹敵するほどのヌードとエッチの連続。その合い間合い間に挿入される一切笑えないノリツッコミ漫談。ゾンビが出てくるのは終盤ほんのちょっとだけ。狭い院内で数人のゾンビが数人の身内を襲撃。顔色が悪いだけのゾンビ、ポンプで血糊を噴き出すだけの残酷描写、そしていつもながらの変なタイトル。もう何から何まで素晴らしい!
これぞトラッシュフィルム・ファンが捜し求めていたパーフェクトな1本です。
この他にもまだまだ・・・
以上、鑑賞中思わず幽体離脱してしまいそうな脱力系ゾンビ映画厳選10タイトルでした。私血みどろ監督深沢が責任を持ってチョイスいたしました。
この他にアメリカ産ゾンビ・コメディ「学園パニック ゾンビの逆襲」「インディアン・ゾンビ 死霊の詰合せ」なども最終候補に挙げておりました。ただ、コメディは確信犯的にゆるくしている部分もありますので、一番天然な「スペース・ゾンビ 吸血ビールス大襲来」を脱力ゾンビ・コメディ・アメリカ代表としました。
他、ゾンビがバットで不良どもを殴って回る「ゾンビナイトメア」も完全に脱力系ですが、ブカブカのゾンビマスクくらいしかツッコミどころも無いので、「ゾンビの秘宝」を変なゾンビマスクの代表としてチョイスしました。
安定の(?)ユーロシネ&JVD
結果的にジャン・ローラン、ジェス・フランコら、ユーロシネの作品が3本も入ってしまいました。
また、日本からは期せずしてJVD製作の岡崎喜之監督作品が2本も。2000年と2006年の作品ですが、エッチいっぱい→最後にちょいゾンビ、と全く同じ構成です。裏切りません。
脱力系ゾンビ探求はお宝発掘の愉しみ
粗の目立つ低予算インディーズ・ゾンビ映画でも、楽しめる作品は沢山あります。深いゾンビ愛と映画作りへの情熱、そしてサービス精神さえあれば、たとえ下手な部分があっても、他の良い部分を観客は賞賛してくれます。
しかしその良い部分がなかなか見つからない残念な映画にも、確実にファンは存在します。あえて地雷を踏みたい人々がいるのです。
その楽しみ方は「トンデモナイ映画に出遭ってしまった!」というお宝発見のような感覚に近いものがあります。まさに「秘宝」ですね。
レンタル店の棚の隅から、叩き売りセールのワゴンの中から、まだ誰も目を着けていないお宝を発掘。これも1つの映画の楽しみ方ですね。時間に余裕があれば、の話ですが。
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