ラブクラフトの怪奇小説のような、全編、不気味で陰鬱なムード漂うゾンビ映画、
「メシア・オブ・ザ・デッド」を紹介します。
(アメブロ「地獄のゾンビ劇場」からの移行記事です)
「メシア・オブ・ザ・デッド」ストーリー
「メシア・オブ・ザ・デッド」
(MESSIAH OF EVIL)
(1973年 アメリカ 89分)
連絡が途絶えた父の安否を気遣い、海辺の町を訪れるヒロイン。
しかし、訪ねた住居に父の姿は無く、
町の人々はどこか挙動不審。
娘は父の遺した日記から、この町の奇怪な伝説を知る。
邪神を崇拝する司祭が海から訪れ、
住民達を異質な存在に変化させる、というのだ。
どうやら父は既に異生物へと変身を遂げてしまったらしい。
娘は町で知り合った青年とともに父の帰りを待つ。
その頃、町の住民たちにも異変が起きていた。
身体から血液が失われ、
青白い食人鬼と化し、集団で人を襲うのだ。
ヒロインの身体にも、変異の兆候は現れ始める。
目や耳から血液がしたたり、皮膚を傷つけても出血しない。
そんなヒロインと青年に、狂気の住民たちが襲いかかる。
「メシア・オブ・ザ・デッド」はこんな映画!
全編に渡り陰鬱なムードが漂います。
暗い。
厭な感じの作品。
この「厭な感じ」は、当時のホラー特有の味わいでもあります。
本気で怖がらせようとしてるんですね。
名作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のゾンビ風味と、
同じく名作「恐怖の足跡」のゴースト風味をミックスした作品。
実際この2作からの影響は明らか。
「恐怖の足跡」の不気味な死人たちに、
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」ばりに人喰いをさせちゃった感じです。
この作品のゾンビは死後甦るのではなく、
生きながらにして、だんだんゾンビっぽくなって行きます。
噛まれなくても、その町にいるだけで感染、ゾンビ化が始まります。
「あ、ゴメン、始まっちゃったみたい」
てな具合。
映画館に入った女の子を襲うのに、
普通の観客のフリをして周囲の座席を埋め逃げ道を奪うなど、
ゾンビ化後も知性は残っているようです。
ゾンビになりかけの人は獲物と見なされ喰われますが、
共喰いはせず。
でもゾンビの死体は食べちゃうという・・・
なんか仲間とゴハンの境界は微妙。
ゾンビメイクは青白い塗りと、目の下のクマだけ。
残酷描写は血をいっぱい着けるだけ。
「ゾンビ」ばりの食人シーンもありますが、直接描写は無し。
時代が古いですからね。
この作品、入院中のヒロインの独白、という形でお話が進みます。
これだとどんなピンチに陥っても最後は助かる、
ということが判っているので、ホラーとしては不利です。
でも当時結構多かったパターン。
同時期のゾンビものでは「カリブゾンビ」もそうでした。
ところで・・・・・
ちょっと惜しい点が。
※ 以下、結末に触れています。
クライマックス、海へと追い詰められるヒロイン。
ついにゾンビたちに捕えられてしまいます。
絶体絶命、と思いきや、
貪り喰われることはなく、
生け贄として海岸に縛り付けられます。
そして伝説の通り、海の底から邪悪な司祭が登場し・・・・・
・・・というまさに劇中最大の山場となるべきこの場面、
無いんですよ。
海岸に立たされてるヒロイン、
馬に乗ったおじさん、
画はこの2カットのみ。
あとは全てナレーションで説明されます。
そこ、はしょりますか?
う~ん・・・・・
あとついでに言うと、
ヒロイン、けっこうゾンビ化が進んでたはずなのに、
その後普通に病院へ入院してましたね。
治ったのか?
まあ、いいか。
そんな細かいこと言っちゃいけませんよね。
ラブクラフトの怪奇小説のような、
陰鬱な雰囲気を愉しむべきゾンビ映画でした。
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